際建つグレー

生活道路と用水路に挟まれた奥行4m程の東西に細長い敷地に、1階を駐車スペースとエントランス、2階をワークスペースとした2つのテナントを計画した。幅員2.8mのいわゆる2項道路に接道するため、道路境界線から0.6mセットバックした範囲には建築ができず、厳しい道路斜線制限を受けるなど、建物の奥行・高さに制約のかかる敷地であった。そこで、周辺の街並みに倣いつつ、長手の生活道路に対しては低く、短手に対しては高くなるよう矩勾配の切妻屋根で斜線をかわし、ボリュームを調整しながら敷地いっぱいに細長い空間を計画した。1階のエントランスは、各テナント2台分の駐車スペースを確保する必要があったため、履替・収納スペースと吊り階段のみで構成し天井は低く抑えることにした。2階のワークスペースは、フレキシブルな什器レイアウトとプライバシーを確保するためにアイレベルより高く壁を立ち上げ、十分な気積を確保するために屋根と同じ矩勾配の天井で覆った。外壁と屋根は淡いガルバリウム鋼板の平葺きで覆い、窓は水平に連続させて、この建築の持つ佇まいがより引き立つように、そして馴染むように意識した。商いと住まいが近接した暮らしの際に建つ建築として、象徴的でありながら、でもどこか馴染みのあるような“どっちつかずな”佇まいを目指した。

建築敷地:広島県福山市
竣工年月:2021年4月
⼯事種別:新築
主要用途:事務所
主要構造:木造 地上2階
敷地⾯積:77.52㎡
建築⾯積:46.41㎡
延床⾯積:92.82㎡
写真撮影:下川高広/冨士スタジオ